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完全に避妊できない!? 医師が教えるアフターピルの正しい使い方

完全に避妊できない!? 医師が教えるアフターピルの正しい使い方

オンライン処方を始めたクリニックが話題となり、世間の注目を集めている“アフターピル”(緊急避妊薬)。

SNSでは「休日など、病院に行けないタイミングで避妊に失敗してしまった場合、すぐ入手できると助かる」「産婦人科ってなんとなく行きづらいから、ネットで買えるとうれしい」など肯定派の意見が上がる一方、「気軽に入手しやすい分、避妊への意識が低下するのでは?」「半ば自己判断で買えてしまうけど、安全面はOKなの?」など懸念の声も。

賛否両論ありますが、そもそもアフターピルとは一体どういうものなのでしょうか。

正しい用途は? 効能は? 副作用はあるの? オンライン処方ってあり?
そうしたアフターピルに関する疑問を解消するため、よしの女性診療所の産婦人科医・吉野一枝先生にお話を伺いました。

■アフターピルは、完全な避妊薬ではない!?

──そもそも、アフターピルとはどんな薬ですか?

「緊急避妊と言って、妊娠を望んでいないのに無防備なセックスをしてしまったときに、72時間以内(3日以内)に飲むと、ある程度は妊娠を避けられる薬です」

──絶対妊娠しない、ということではないのですか?

「100%ではありません。排卵前後の時期でなければかなり効果はありますが、アフターピルを飲んでも妊娠することはあります。排卵の直前や直後など、排卵に近ければ近いほど危険です。

また、72時間以内に飲めば効果がありますが、飲んだ後のセックスには効きません。『アフターピルを飲んだ直後だから、しばらくは大丈夫』と考えるのは間違いです。実際、それで妊娠した人もいます」

──少しでも72時間を超えたら効果はないのでしょうか?

「WHOのデータによると、72時間を超えても効果があった例はあります。ただし事例数は少ないので、やはり用法通りの時間を守るのが一番ですね」

■正しい知識があれば、アフターピルは怖くない

──副作用はありますか?

「今の日本でアフターピルとして使われている『ノルレボ錠』は、気持ち悪くなるとことはまずありません。なぜなら、プロゲステロンという黄体ホルモンの単剤だから。この薬が認可になる2011年より前に使われていた薬と比べると、副作用がまったくないとは言いませんが、かなり少ないんです。

以前の緊急避妊は、中用量ピルを12時間空けて2回飲む『ヤッペ法』というやり方が一般的でした。この中用量ピルにはエストロゲンという卵胞ホルモンが含まれており、その影響で吐き気が出る、血栓ができることがあるといった副作用がみられました。

でも、ノルレボ錠は1錠飲めば終わりですし、副作用もグンと減っていますよ」

──体への負担は大きくないのですか?

「1回飲むくらいなら平気です。中絶するほうが、よっぽど負担がかかりますから。アフターピルは、決して怖いものではないのです。なので、避妊に失敗したら、72時間以内にすぐ近くの産婦人科に行ってほしいですね」

■基本的には、対面で受診を

──最近、オンライン処方を始めたクリニックが話題になっていましたが、病院へ行かずにアフターピルを買うことについては、どうお考えですか?

「やはり、きちんと対面で受診してほしいですね。

地方は産婦人科が少なく、すぐ噂になったりするので行きづらい人もいるでしょう。オンライン処方がきちんと運用されれば、利点はあると思います。ただ、まだ日本ではその体制ができていない状況で、法律もありません。

ちなみに私は、医師がネットを介して問診や説明をするオンライン処方もなく、単純にネットで薬を購入する行為自体には反対です。正しい知識がないままネットで買うと、間違った使い方や認識を持ってしまう人がいるので。

たとえば、アフターピルを飲んだ翌日の無防備なセックスで妊娠してしまう人や、出血があった後に混乱して受診のタイミングがわからなくなってしまう人ですね」

──アフターピルを飲むと出血が起こるのですか?

「はい。WHOのデータによれば、16%の人は飲んでから7日以内に『消退出血』という出血があり、50%の人は次の生理がずれて来ます。それを知らないと『えっ、なんで今出血するの? おかしいな、生理の時期じゃないのに……』と混乱してしまう人もいるでしょう。

また、実際に妊娠していても着床出血という少量出血が起こることはあります。自分だけで判断するのはすごく難しいので、確認するにはやはり産婦人科に行くのが一番。だから最初から受診して、きちんと対面で説明を受けてほしいです」

■ピルで世界に遅れをとる日本

──海外では、薬局でアフターピルを買える国もあるそうですが……。

「ええ。フランスなどは本当に進んでいて、薬局で自己申告すれば薬剤師がしっかり対応してくれるので処方箋がなくても簡単に買えますし、値段も安いです。それに比べると日本は何十年も遅れていますよ。

日本も薬剤師さんたちが正しい知識を身につけて、薬局でアフターピルを扱えるようになればいいと思っているのですが、まだまだ難しいでしょうね」

──なぜ、そんなに海外との差があるのでしょう?

「海外の女性は自己肯定感が高く、自分で自分の体を大切にしようという意識があります。一方、日本人女性は、なかなか自分たちの健康について知ろうとしません。

普通のピルもアフターピルも、『ホルモン剤って怖いんだよね』ぐらいにしか思っていない人はまだまだ多いと思います。当事者が無関心だから、世の中が動かないのです」

──日本のアフターピル事情を変えていくには、どうしたらいいと思われますか?

「まずは女性自身の意識を変える必要がありますね。正しい知識を持って、自分たちの体を大切にするために、もっと声をあげていかないと。1人の声では変わらなくても、多くの女性が『もっとこうしてほしい』という思いを口に出していけば、やがて世論を動かし、日本の医療の常識を変えていけると思います。

それからやはり、アフターピルは飲めば100%妊娠しないというわけではないので、普段から低用量のピルを飲むことをおすすめしたいですね。望まない妊娠を防ぐためにも、女性自身の健康を守るためにも」

──健康のためとは、一体どういうことでしょうか?

実は、低用量ピルは女性の体にとってメリットが多いんです。避妊だけでなく、排卵をお休みすることで卵巣が傷つくのを防ぎ、子宮の負担を減らす役割もあります。そういう正しい知識を身につけて、もっと日常的に低用量ピルを活用してほしいですね。そのためにはまず、婦人科をホームドクター(かかりつけ医)にしてもらうのが一番だと思います」


アフターピルは正しく飲めば怖いものではない、ただし100%避妊できるものでもない、ということがわかりました。

そして吉野先生曰く、普段から低用量ピルを使うのがベストとのこと。自分で自分の体を大切にするために、これを機にまずは近くで産婦人科のホームドクターを探してみてはいかがでしょうか。

(谷村あすか+アリシー編集部)