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自分をスキになるって、意外とカンタン。
鏡の前で、ひとりパリコレ。
欠落感の原因は「結婚できないから」ではない/エッセイスト紫原明子(後編)
もうすぐ30歳、どう生きる?

欠落感の原因は「結婚できないから」ではない/エッセイスト紫原明子(後編)

IT起業家・家入一真氏との結婚・離婚を経て、2人のお子さんを抱えながら31歳にして社会人デビュー。現在はシングルマザーとして女性たちの悩みに寄り添いながら言葉を紡いでいる紫原明子さん。

前編では壮絶な日々から人生が好転しはじめたきっかけ、そこから学んだことについて教えてもらいました。人生には変えられるものと変えられないものがあり、それを見抜く目が必要というアドバイスや、Twitterや外部の強い言葉に惑わされないためのコツなど、私たちにとっても気づきとなる内容です。

★詳しくは前編をチェック!

後編では、さらにつっこんで、悩み多きこの人生をどう生き抜けばいいのか伺いました。

■自分を高く見積もって、攻めの姿勢で生きて行く

——紫原さん自身が迷った時は、どうやって解決の糸口を見つけていますか?

紫原:もし私が人の言葉を頼りにすることがあるとすれば、古いけれど普遍的に愛されているような本を読みますね。特に好きなのは松谷みよ子さん、須賀敦子さん、工藤直子さん。大正〜昭和初期に生まれた女性作家のエッセイや小説が好きなんですが、地に足をつけつつも型にはまらず自分で考えて生きる、バランスの良い感じがするんです。そういうものに触れると、いかに私たちが、出所不明の保守的な考えに囚われているかということが俯瞰で見られるし、視野も広がると思います。あと、女性たちがみんな生き生きと描かれているから、刺激になるはず。現代の女性たち、もっと自分を高く見積もった方がいいです。

——もしかすると、私たちにはそれが一番欠けているかもしれません。

紫原:「こんな人生を生きてみたい」とか「あんな風に素敵な女性になりたい」とか、もっと自分から攻めていくことが必要だと思います、受け身じゃなくて。たとえば「セックス・アンド・シティ」を見たあとにヒョウ柄の服が着たくなるじゃないですか(笑)。ああいう感覚を大事にしたいですよね。どんな女性にも攻めるだけの武器が絶対あるし、素晴らしい人生の主人公になり得るんだから。婚活なんかで消耗してる場合じゃないですよ。

◼既存の枠組みにとらわれる人生は、どんどん古くなっていく

——婚活で消耗! みんなしています(笑)。

紫原:結婚って、今の人生を「プラスアルファ」にするためにするものなのに、婚活で病んでいたら「プラマイゼロ」だと思います。結婚経験者として言いたいのは、相手がいないってことは、誰とでも自由に恋愛できるんですよ! そういう自由が私には長い間なかったから、離婚が成立した時は「これが自由か」ってすごく感動したんです。「一人」のメリットが、どうも軽視されがちじゃないかな、と思いますけどね。

——やっぱり、結婚をしていないと人としてどこか欠けているんじゃないか、みたいな感覚があるのかもしれませんね。

紫原:そうかー。その欠落感の原因って、本当に結婚できていないことに起因しているのかな? 結婚に悩み始める年齢って多分、仕事にも慣れてきて、最初ほどのがむしゃらさも必要なくて、なんとなく人生のテーマを見失っている時期じゃないですか。だから仕事のほかに打ち込める何かがあったら、その欠落感って埋まるような気もしますけど……。

あとは、さっきもお話ししたように、「努力さえすれば何もかも思い通りになる」っていうことはありえないので。結婚できるかどうかも、結婚を完遂させられるかどうかさえも、運に任せるしかない部分ってあると思うんです。

——無理やりたぐり寄せようともがいても、そうやって出会った相手とはしっくりこないですもんね……。

紫原:私のなかに今「結婚の価値を下げる」っていうテーマがあって。結婚があまりにも大きな契約になりすぎているから、そういうのをどんどん壊していこうと計画しているんです。思うに、結婚していてもしていなくても、自分の肩書きって常に「(仮)」で良くて。そうしておけば、いざというときに「(仮)なんだからしょうがないよね」って諦めもつくじゃないですか。もうね、これから先は既存の枠組みにとらわれる人生って、どんどん古くなっていくから。

——たしかに(仮)って考えておけば、不完全な自分でも当たり前だと思えるし、フットワークも軽くいられそうですね。最後に一つ。冒頭で、「刺激がないと生きていけない」とおっしゃっていましたが、今の紫原さんは、刺激的な人生を送っていますか?

紫原:うーん、もちろん今でも刺激は欲しいんですけど、求める刺激の質が変わった気がしますね。以前はどちらかというと自虐をともなう刺激が欲しくて、泣いたり怒ったりしていました。でも最近はそういう激しいものより、その中間にあるグラデーションを十分刺激として感じられるようになった気がします。見える景色の解像度が上がって、時間の流れ方もゆっくりになった感じ。あ、もしかすると、これが歳をとったってことなのかもしれないですね(笑)。


穏やかでにこやかな佇まいとは裏腹に、紫原さんの言葉には、壮絶な運命を生き抜いてきた人だからこそ語れる言葉の強さがありました。「悩み続けることからは一生逃れられないけど、それでも絶望せずに生きていかなくちゃいけない。大事なのは、悩みを抱え続けるための筋力を鍛えること」——このアドバイスを糧に、強くしなやかに今を生き抜いく覚悟を決めようと、筆者も心に誓ったのでした。

(波多野友子+アリシー編集部)

<プロフィール>
紫原明子(しはら・あきこ)
ッセイスト。1982年福岡県生。16歳と13歳の子を持つシングルマザー。著書に『家族無計画』(朝日出版社)、『りこんのこども』(マガジンハウス)がある。現在はクロワッサンオンライン「紫原明子のお悩み相談」、東洋経済オンライン「はじまりの食卓」等を連載中。