メディア個別 一難去ってまた一難。心が折れかけた時の処方箋/エッセイスト紫原明子(前編) | アリシー

アリシー

自分をスキになるって、意外とカンタン。
いつもより、ちょっとだけ遠くへ。
一難去ってまた一難。心が折れかけた時の処方箋/エッセイスト紫原明子(前編)
もうすぐ30歳、どう生きる?

一難去ってまた一難。心が折れかけた時の処方箋/エッセイスト紫原明子(前編)

「こんなにがんばっているのに、どうして私の人生、うまくいかないんだろう」考えているうちに、どんどん自分が価値のない人間に思えて情けなくなる。そんな時、ふと誰かに心のうちを聞いてもらいたくなりませんか? エッセイストの紫原明子さんは、女性メディアなどで多くの悩みに答えてきたお悩み相談のスペシャリスト。IT起業家・家入一真氏との結婚・離婚を経て、2人のお子さんを抱えながら31歳にして社会人デビューを果たすという波乱万丈な人生を送ってきた紫原さんに、心が折れてしまわないための人生の受け入れ方について伺いました。

◼すべてを失った“かわいそうな主婦”から脱却したかった

——高校時代に実業家の家入一真さんと出会い、18歳で結婚、19歳で出産。刺激的な人生を送られてきたのですね。

紫原:私、刺激がないと生きていけないタイプなんですよ(笑)。高校生の頃は本当に陰キャ(※陰気なキャラクター)で、とにかくくすぶっていたんです。そのくせ、常に「何者かになりたい」「選ばれたい」と願っていました。そんな時、ネットを介して家入さんに出会ったんです。私が17歳、彼が21歳。半年間ネットでやり取りをして、その後半年間付き合って結婚。すぐに子どもにも恵まれて……。とにかく結婚にまつわるイベントを急いでこなしていった感じです。そして彼は仕事の勢いに乗って、会社までつぎつぎと立ち上げていきました。

——そして事業は成功し、一躍IT長者へ。当時の結婚生活はどのようなものだったのでしょうか。

紫原:最初は刺激的で楽しかったですよ。故郷の福岡から上京して、住むところもどんどんグレードアップしていって。でも今思い返すと、やっぱりすごく孤独だった。彼がお金を持ってからは、夜になっても家に帰ってこなくなって……。別居に至るまでの間は本当に苦しい時期を過ごしました。それでも心が折れなかったのは、どこか見栄を張りたい気持ちがあったんだと思います。

——見栄、とは?

紫原:「かわいそうな人」で人生終わりたくないという思いです。「お金持ちの奥さんが離婚してすべてを失って、あの人かわいそうね」って、陰口叩かれるじゃないですか。だからそんな情況を打破したくて、夜な夜なホームパーティを開くことにしたんです。それを続けているうちに、「家入の妻としての私」じゃなくて「私自身」を好きだと言ってくれる人たちが増えていきました。

若くして専業主婦になった私が、初めて「自分の力で人に影響を及ぼすことができている」という実感を得たのがその頃。そしてこのホームパーティがきっかけで、31歳にして人生初の就職口を紹介してもらうことになったんです。

◼変えられるものと変えられないものを見抜く目が必要

——紫原さんの人生、本当に波瀾万丈すぎです……。ご主人と別れて傷ついたかもしれませんが、初めて“紫原さん自身の”人生が始まったという感じ。

紫原:30過ぎてからようやく「機が熟した」ってことだったんじゃないかと思うんです。何かを「やらなくちゃ」と思っていてもできない時っていうのは、まだそのタイミングが来ていないということ。だから一度運命が転がり始めたら、順調にキャリアも積み重なっていきました。

——もちろんタイミングもあったかと思いますが、紫原さんのように自分で自分の人生を切り開いていく秘訣があれば教えてください。

紫原:一つ挙げるとするなら、「憎しみのエネルギー」を表に出さないように心がけるっていうことかな。別居当時は元夫に対して、吊るし上げてやろうと思ったことは何度もあります(笑)。でも、あのときそれをやっちゃったら、長い目で見た時に私にとってプラスがなかった。だから、表向きには健やかに過ごしていました。それが運命を良い方向に導いたのかもしれません。だとしても、努力だけではどうにもならないことが世の中には存在するんだって、痛いほど思い知りましたね。

——そうかもしれませんね。私もそうですが、「努力すれば運命は好転するはず」っていう、一見ポジティブな考えにとらわれている女性も多い気がします。

紫原:「世の中には変えられるものと変えられないものがある。大事なのは、それを見抜く目だ」という言葉があります。変えられないものは黙って享受するしかないし、変えられるものは自分の力で変えていかなきゃいけないんだけど、それがどちらに属するかを私たちは見極めなきゃいけない。ずっとずっと葛藤しながら、それを続けていくのが人生なんですよね。もはや修行ですよ。

◼ Twitterで断定的な物言いをする人は私たちの悩みを知らない

——辛い……。そういう修行から逃げたくて、すぐ他人のアドバイスに頼りたくなります。

紫原:言葉が強い人の意見をつい鵜呑みにしてしまう人、結構多いですよね。たとえばTwitterで流れてくるバッサリと悩みを切り捨てるようなツイートに、一瞬は気が紛らわされるかもしれませんよね。でも、140文字の世界で断定的な物言いをする人は、私たちの悩みの100分の1も知らない。実際にはすごく表面的な言葉ばかりで、そこに私たちの悩みの答えなんて書いてありません。そういうものを見て小さな不安をちょっとだけ紛らわせて、また不安になって、ちょっとだけ紛らわせて……。それを繰り返していても、良い価値観って育まれないんじゃないかな。


ツイッターの140文字に答えがなくても、しっかりと語られる紫原さんの言葉には私たちが人生を生き抜くヒントが込められているように感じました。

次回は後編。悩み多きアラサー世代。私たちが人生に悩んだ時、どのように乗り越えていけばいいのでしょうか? 婚活で消耗している人、そして世の中の「こうでなくては」にとらわれている人にグッとくるインタビューをお届けします。

(波多野友子+アリシー編集部)

<プロフィール>
紫原 明子(しはら あきこ)
エッセイスト。1982年福岡県生まれ。16歳と13歳の子を持つシングルマザー。著書に『家族無計画』(朝日出版社)、『りこんのこども』(マガジンハウス)がある。現在はクロワッサンオンライン「紫原明子のお悩み相談」、東洋経済オンライン「はじまりの食卓」等を連載中。