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事実婚のメリットってなに? 法律婚との違いを聞いてきた 

事実婚のメリットってなに? 法律婚との違いを聞いてきた 

2018年7月、人気ブロガー・はあちゅうさんが事実婚を発表し、話題になりました。耳にしたことはあるけれど、実はよくわからない事実婚。法律婚とは何が違うのでしょうか? 事実婚のメリット・デメリット、不利な面を補う対策などを、自身も事実婚をされている行政書士の武石文子さんに聞きました。

■手続きなしで夫婦になる事実婚。同棲との違いは?

──そもそも、事実婚とはどのようなものですか?

「婚姻届を出さずに結婚することです。現在の法律婚では夫婦で一つの戸籍を作りますが、事実婚では戸籍は変わらず、どちらかが姓を変える必要がありません」

──はあちゅうさんの発表で、事実婚に手続きがあることに驚きました。

「事実婚には、本来手続きは不要です。『私たちは結婚しました』と宣言して、周りの人が二人を夫婦だと認めればそれで成立します。何も手続きしていない事実婚の方はたくさんいますよ。

話題になっている手続きは、扶養に入りたい時など、夫婦だと証明しなければならない場合に必要なだけです。どちらかが世帯主となった場合、夫が世帯主なら妻の住民票続柄に『妻(未届)』と記載され、その逆もあります」

──同棲との違いはなんでしょうか?

「同棲は結婚したという意識はなく、ただ一緒に住んでいるだけ。本人たちと周りの人に『夫婦だ』という意識があるかどうかの違いです」

■仕事のため、信念のため…「名前を変えない結婚」を選んだワケ

──事実婚のメリットはどういったところにありますか?

「名前が変わらない点です。フリーランスの方や研究者など、自分の名前で仕事している人にはメリットが大きいですね。個人で仕事をしている人が名前を変えると、銀行口座の名前が違ったり、パスポートの名前とビジネスネームが異なって海外でホテルに宿泊できなかったりと、さまざまな問題が生じますから」

──武石さんも名前を変えたくなくて、事実婚にしたのですか?

「はい。私は相手の姓になって、相手の家に入ったかのように思われること・嫁扱いされることが嫌で、名前を変えたくなかったんです。夫も姓を変えたくない人だったので、選択肢は事実婚のみでした。『嫁ではない』という思いは常にありますが、夫の家族は事実婚に理解のある方々で、とても仲良くやっていますよ。

ただ、中には相手の家族と揉めて、縁を切る人も。私の親も、『法律婚にしないと法律に守られず、不利益をこうむる』と最初は反対したんですよ。相手とその家族に理解があるか否かは重要です」

■子どもの姓は家庭それぞれ

──子どもが生まれたら、子どもの姓はどうなりますか?

「出生届を出すと、まず母親の姓になります。戸籍上は結婚していないので、シングルマザーと同じ扱いで、子どもは母親の戸籍に入るためです。父親の姓に変えたい人は、家庭裁判所に氏の変更を申し立てて、許可を得る必要があります。

私の息子二人は私の姓ですが、一人っ子同士だという知人夫婦は子ども二人にそれぞれの姓を分けています。家庭によりさまざまです」

──名前の違う人がいると、子どもの家族に対する認識が変わるのでは?

「それはあまり問題ないと思います。たまに『子どもが可哀相』と言う人もいますが、それは自分が育ってきた法律婚家庭の環境から考えているから。私の息子も、家族で名前が違うことを『なんでそれが問題になるのかが理解できない』と言います。生まれた時からそれが当たり前であれば、悩んだりしないのです」

■老後に出てくる問題も。事前に契約を結んでおこう

──事実婚のデメリットはなんでしょうか?

「日常生活ではほとんどないと言えるでしょう。私の場合、自分が事実婚だったことも忘れていたくらい(笑)。一部の生命保険や住宅ローンに受け付けてもらえなかったり、海外旅行保険に家族一緒に入れなかったりと、あっても本当に些細なことです」

普段の生活ではほぼ困らないものの、老後には問題が浮上してくることもあるそうです。以下4点は法律婚にあって事実婚にはない権利ですが、不利な面をある程度契約で補うことは可能とのこと。

1) 遺産を相続する時

事実婚では配偶者が亡くなった時、遺言書がなければ財産を相続できません。遺産相続には、双方が『自分が死んだ時、配偶者に全財産を与える』などと遺言書を書く必要があります(ただし、遺産を受け取っても相続税を払う場合は2割増し)。

2) 病気やケガをした時

配偶者が手術などを受ける際、事実婚の夫婦では手術の同意書へのサインや、病状説明ができない場合も。事前に配偶者の手術に同意したり、代わりに病状説明できる代理権を与えたりする契約書を作っておくと安心です。

3) 認知症など、本人に判断能力がなくなった時

子どもがいない、親族と不仲といった場合、認知症など判断能力が不十分な状態になってしまった時、助けてくれる人がおらず、詐欺に遭うなど不利益をこうむることも。家庭裁判所に申し立てると、こういった方の生活を援助する「成年後見人等」を決定できますが、事実婚の夫婦では申し立て自体ができません。元気なうちにお互いを任意後見人に指定できる、任意後見契約を結んでおくと良いでしょう。

4) 葬儀を行う時

自分の死後に葬儀がきちんと行われるか不安な場合、死後の事務を取り仕切る人を指名する死後事務委任契約を結ぶ人もいます。

■世の中は変わりつつあるが、「家」意識も根強い

──日本で事実婚があまり普及していないのはなぜですか?

「お金の面で不利なのと、今はない家制度にとらわれているためと考えられます。

現在の戸籍制度はもともと、明治時代に国民を把握し、徴税や徴兵を行うためにできました。同じく明治時代には民法で『家制度』が規定され、先祖から子孫へ財産などを引き継ぐことが大事とされました。

旧民法が廃止された今も政治的な事情で『家』意識が温存され、戸籍制度は形を変えましたがそのまま残り、戸籍制度に基づく法律婚の方が金銭面などで有利な状態です。今はマイナンバーで個人を特定できるので、戸籍の意味は実際なくなってきてはいるのですが。最近、都会の若い人たちは法律婚にこだわらない人も増えた印象ですが、地方ではまだまだ家意識が根強く、事実婚するのは大変でしょう」

──事実婚への理解はどうしたら進みますか?

「若い人たちの意識次第だと思います。特に、男の人。事実婚したがるのは基本的に女性で、男性は口では『いいよ』と言いつつ、『本当は法律婚が良い』と思っている人は結構いるように感じます。男性の理解が進み、事実婚の夫婦が増えれば、世間により受け入れられていくのではないでしょうか」


法律婚でうまくいく人もいれば、事実婚の方がメリットのある人もいて、結婚の形は人それぞれ。とはいえ現状では、事実婚の方が不利な面が多いことは確かなようです。事実婚を考えている人は、専門家へ相談するのも手。結婚を考える読者の皆さんが、自分に合った選択をして、幸せな生活を送れますように。

(五十嵐綾子+ノオト)