「モテ」って一体、なんだろう? だれもが持つ恋のカタチ

「モテ」って一体、なんだろう? だれもが持つ恋のカタチ

【未婦人公論】vol.3
大学時代の友人Sちゃんが結婚すると言うので、結婚祝いに会うことになった。

久しぶりに会った彼女は見違えるほど美しく、「ダイエットしたの」と恥ずかしそうに言う姿はとても幸せそうで、私は心から彼女の結婚を祝福する気持ちになった。

けれど同時に、彼女が学生時代と変わらずに私を好きでいてくれたことを、少しだけ後ろめたく感じてもいた。

学生時代、私は彼女のことを、心の中でちょっとだけ馬鹿にしていたのだ。

彼女は同じサークルのメンバーの中でも、とりわけあか抜けなかった。いつもおどおどしていて、自信がなさそうで、もっさりとした地味な色の服を着ていた。

他の女の子たちが、パステルカラーのカーディガンや完璧に計算された丈のスカート、デコルテの綺麗さを演出する襟ぐりのニットに身を包み、きゃあきゃあとキャンパスで溶け合っている中、彼女はかなり、地味だった。

なんでこんな子が、同じ仲良しグループにいるんだろう。

そのくせ、私は彼女に激烈に嫉妬していた。

彼女はなぜか、とてもモテた。いつも、20代後半から30代の社会人と、途切れることなく付き合っていた。しかも、その相手から高額のプレゼントをもらったり、それとは別におごってくれる男友達がいたりしたのだ。

彼女の、女友達に向けられた内気そうな笑顔の後ろには、多くの男の人に愛され、大事にされている気配が漂っていて、私はいつも彼女が羨ましかった。
その頃の私は、同じ大学の男の子たちを相手に、いつも惨敗の恋をしていた。片思い、もしくは一方通行の虚しい関係。

狂ったようにモテたかった。

女性誌のモデルさんと同じピンクのニットに身を包み、髪の巻き方を必死になって研究し、ピンクのモテ本を読み込んで、そうやっていくらモテるための技術を学んでも、男の子たちは私の横を素通りした。どんなに努力しても、いくらも愛されない。私は自分が恥ずかしかった。

その横で、「全然たいした相手じゃないよ」と言いながらも、やすやすと社会人との恋愛を手に入れているSちゃんは、私よりも遥か上のレベルで勝負しているように見えた。

なんであの子が。

嫉妬の気持ちと、バカにする気持ちがない交ぜになった、マーブル模様の彼女への思い。それを隠したまま、その出処に気づかぬまま、私たちは卒業し、会わなくなった。

誰かをバカにする気持ちは、本当は防衛本能だ。

みじめさ、自分の欠けている部分に気づかされるのが怖くて、反射的に突き放す。そうしないと、相手が自分よりも、多くを持っていることに、気づいてしまうから。プライドが、保てないから。

結婚祝いの韓国焼肉屋で、学生時代には恥ずかしくてつけられなかった紙エプロンを首からぶらさげながら、私はSちゃんに、正直にその時の気持ちを打ち明けた。

「どうしてSちゃんは、あの頃あんなにモテたの?」

彼女ははにかみながら答えてくれた。

「私は、自分がいけてないの知ってたけど、恋愛はしたかったんだよね。だから、自信を持てるところに行こう、と思って」

「たとえば、住んでる駅の近くの飲み屋さんに一人で行くとするじゃない? そういうところで一人で飲んでる30代の男の人だったら、ゼッタイに私のことバカにしないって思ったんだ」

「同級生のキレイな女の子たちみたいに、キラキラした大学生の男の子との恋愛は無理でも、年上の地味な男の人となら、大事にしてもらえそうだな、って気がしてたから」

恋は、その人自身の形をしている。

三角の人の恋愛は、三角。四角い人の恋愛は、四角。自分の形を知らないと、その形を無理やりにゆがめて、型にはまろうとしてしまう。「理想の恋」にとらわれてしまう。

そういう状態でする恋は、いつも苦しいものになってしまう。

彼女は、自信がないかわりに、ちゃんと、自分の形を知っていた。知って、ちゃんと、活かせる場所を探してたんだ。

彼女は、鈍くもバカでもなんでもなかった。バカなのは、自分の形を知りもせず、その形を受け入れてくれる場所も探さずに、他人をうらやんでいた、私のほうだ。

恋愛ができる、できないは、決して魅力の有無じゃない。容姿や能力、センスの差じゃない。自分の形を認めること、ただそれだけだ。

彼女は彼女なりの紆余曲折を経て、最終的に、自分の形にぴったりはまる幸せを手に入れた。その顔には、学生の頃の自信のなさげな表情など想像もできない、すがすがしい美しさがあった。

彼女のことを、今ではとても尊敬している。

<プロフィール>
小野 美由紀(おの・みゆき)
ライター、コラムニスト。1985年生まれ。性愛やコミュニケーション、家族問題、そして旅を主に扱う。2月10日、デビュー作である書き下ろしエッセイ「傷口から人生。〜メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった」(幻冬舎)を出版。Twitter:@MiUKi_None

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