怒りは希望の裏返し? ここ1年くらいの「オンナ」のニュースを振り返る

怒りは希望の裏返し? ここ1年くらいの「オンナ」のニュースを振り返る

【未婦人公論】vol.2
ここ1年くらいのインターネットで話題になったニュースを振り返ってみると、SNSやネットメディアの隆盛によって、女性の言論がますます、加速的に解放されつつあると感じる。

塩村都議の「産まないのか」問題、小保方さんに関する各社報道機関の取り上げ方問題、ろくでなし子さんの2度の逮捕事件と「女性の尊厳と表現をめぐる問題」。引き続きベビーカー論争、女子カースト、毒母と、女の生きづらさを巡る問題に関しては、百花繚乱、百戦錬磨である。

これらのニュースを見ていて思うのは、女たちが「怒りを隠さなくなったな」ということだ。

女の生きづらさ、それに対する男性への不理解とか、社会的な抑圧について、多くの女性有名人が隠すことなくSNSで語りはじめた。さらに一般の女性たちまでもが、少しずつ個人の経験を語り、疑問を記すようになった。

例えば、渋谷の駅構内で女児をキックする母親の衝撃的な動画。あれが話題になった時、「ひどい」とか「信じられない」という批難の声が上がる一方、母親という存在は、時にどうしようもなく育児のストレスに押しつぶされてしまうものだということ、それに対する社会のサポートが不十分であることを、あの映像の母親に一種の同情も込めつつ自分の個人的経験として発信するお母さんも多く現れた。

私ら女には、「男にどう思われるか」というところからどうしたって逃れきれない部分がある。それに輪をかけ日本人だからなのか、「怒り」は人前で表してはいけないものだと思ってしまう。「女であること」の苦労を語るのに、なんとなく罪悪感を覚えてしまう。その枷を、SNSの流動性が少しずつ、壊しはじめたということなのかもしれない。ニコニコいいねのFacebookから、個人的な主張の場へ。そしてそれはたぶん「ありの~♪ままの~♪」の大ヒットと、決して無関係ではないだろう。

21世紀に突入してから14年が経ったにも関わらず、いまだにこんなにもたくさんの女が怒るべきトピックが溢れていることにはおどろき&うんざり。昨年の6月、あれほどまでにセクハラやじ問題で燃え上がったにも関わらず、年末にはヘーキで「産まないのが問題」とか言っちゃう老政治家の悲惨な姿をテレビで見たりすると、「社会」というものの圧倒的な動かしがたさ、堅固さに、思わず「日本の未来は暗い」と悲観的になりたくもなる。
でもね、逆説的にだけれど、私はこの「女性たちが怒っている」という現象は、決して悪い兆候じゃないと思うのだ。

一昨年の暮れ、「格付けしあう女たち 」(ポプラ新書)の著者で、「女子カースト」問題を提起したジャーナリストの白河桃子さんにお会いした時、彼女はこう言っていた。

「女子カースト問題は、多様性ある社会の前触れ。“結婚したら専業主婦”が当たり前だった時代が終わり、女性の生き方が多様化しはじめたからこそ、叩き合ったり比べ合ったりする。社会が進めばそれもなくなるはず」

なるほどな、と思う。問題が発生し、社会現象として名付けられ話題になるのは、裏を返せば、社会の変化の兆しなのだ。

だとしたら、女たちの怒りについても、同じことが言えるのではないか?

均質性がぶち破られる一歩手前の状態だからこそ、女たちは他の女への抑圧を「じぶんごと」化して語り、怒りを表明する。怒りは、パンパンにふくらんだ問題に穴をあけて破裂させる、鋭い針。

マツコ・デラックスさんが人気なのは、みなが蓋をして見てみぬフリをしている怒りを代弁してくれるからじゃないだろうか。彼女の怒りは、抑圧に風穴を開ける「気持ちの良い」怒りなのだ。

そう思えば、女たちが「怒りを表明できるようになった」という社会の風潮の変化は、生きやすい世の中に好転する、契機と取れなくもないだろうか。むしろ、怒りを我慢していたこれまでの社会のほうがよっぽど身体に悪い。私は女たちが、怒りはじめたことを祝したい。

もちろん人生、怒るよりも1ミリでも幸せな期間が長いほうが良いに決まってる。けれど、社会を作るみなそれぞれ、希求する「自分なりの幸せ」というものがあり、そのために「これだけは守りたい」ラインというのはきっと、誰にでもある。それはとても大事なものだ。だから、それが侵されそうなくらいに「おかしい」と思うことには、女はもっと怒っていい。それが、女にとっても男にとっても生きやすい、多様性のある社会を作る、最初の一歩のように思う。

で、そん時には女ですから、できれば朗らかに鮮やかに、そしてエレガントに怒ってゆきたいものですよね。

<プロフィール>
小野 美由紀(おの・みゆき)
ライター、コラムニスト。1985年生まれ。性愛やコミュニケーション、家族問題、そして旅を主に扱う。2月10日、デビュー作である書き下ろしエッセイ「傷口から人生。〜メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった」(幻冬舎)を出版。Twitter:@MiUKi_None

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