洋服に触れることができない…「ボタン恐怖症」とは?

洋服に触れることができない…「ボタン恐怖症」とは?

専門家に聞いてみた!
高いところが怖い、虫に驚いて必要以上に慌ててしまった……なんて場面は、日常でありがちな経験ではないでしょうか。これらに対して恐怖や嫌悪感を抱くのは理解されやすいもの。

しかし、「ボタンが怖い」「ボタンを見ると気持ち悪くなる」というのはどうでしょうか? ちょっと意外すぎますよね。でも実際に、日常的に使うボタンに恐怖を感じてしまう「ボタン恐怖症」という症状があるそうです。今回はこのボタン恐怖症について、ゆうメンタルクリニックのゆうきゆう先生にお話を伺いました。

■ボタン恐怖症って?

──ボタン恐怖症という症状があると聞きました。症状としては名前の通り、ボタンが怖くなるということなのでしょうか?

「『怖い』と感じることが多いのは確かですが、嫌悪感や吐き気を催したり、パニック状態に陥ったりする人もいます。対象がボタンなので想像しづらいかもしれませんが、たとえば突然現れたヘビやゴキブリ、突きつけられたナイフ、爆発物などに恐怖を感じるのと同様に、ボタンに対して恐怖を感じたり嫌悪感を抱いたりしてしまうのです。

ただ、少し注意してほしいのが『ボタン恐怖症』という病気があるわけではないことです。ボタン恐怖症は『限局性恐怖症』といって、『特定の状況・特定の物に恐怖を感じる』という恐怖症の中でボタンが恐怖対象となっている場合にそう言われています。高所恐怖症、閉所恐怖症、先端恐怖症なども限局性恐怖症に含まれ、そういった恐怖の対象は人によって無限にあります。わかりやすく○○恐怖症とは言われていますが、病名として使われるわけではありません。また、『ただボタンがあるだけで無理』という人から、『取れかけのボタンを見ると激しい動悸がして立っていられないほどになる』といった人まで、反応を示すきっかけや状況が人によって微妙に違います。症状自体にバラつきがあるものなので、ひとくくりにしてしまわないことが大切です」

■なぜボタンが怖くなる?

「例えばですが、子どものころは自分で着替える時、ボタンを留めるのに苦戦してしまうものです。その時『こんなこともできないなんて!』と、激しく叱責や罵倒を受けるなど、ボタンがきっかけで辛い目に遭うと、ボタンと恐怖心が結びついてしまうことはあります。

他にも、歩いている時に他人の服に付いているボタンに引っかかって危険な目に遭ったり、自分の服のボタンが取れかけになっているのを見た人から執拗に罵られたり……などの経験から、ある種の強迫観念に駆られることが考えられます。記憶の中で何らかの不快な経験・恐怖を感じた経験とボタンというアイテムが結びついてしまうと、ボタンを見るだけでも動悸がしたりパニックになったりといったことが起こってしまうのです。

ただ、そういった経験があっても、経験をどう消化していくか、記憶の処理の仕方が人によって違うため、『似たような経験はあるけど恐怖症にはならなかった』という人も多いと思います」

■ボタン恐怖症の克服法は?

──対症療法としては精神科などでカウンセリングを受けたら良いのでしょうか? 病院に行く以外に日常的にできる克服方法はないのでしょうか?

「あまりに辛いようであればカウンセリングや受診を勧めますが、本人がそれほどひどくないと感じる場合は『少しずつ慣れる』ようにしていくことも可能だと思いますよ。

もし症状があまり酷くないと感じている場合には、『比較的大丈夫なボタン』からチャレンジしてみるのも良いと思います。素材や形状によって『このボタンにはそれほど恐怖を感じない』といったことがありますし、『服に付いていなければ平気』『大きいと平気』『一つだけあるのは平気』という人もいます。大丈夫なところから少しずつ対象を広げていくことで慣れる人もいるので、それほど深刻でない場合には試してみる価値はあります。

ただ、パニックや自分でも制御できなくなるような症状がある場合は受診をお勧めします。このような恐怖症の場合、基本的には投薬治療よりも認知行動療法でのアプローチが行われるため、専門家からの適切な指導が必要となるためです。恐怖を感じる状況や対象について明確にし、それらに対して少しずつ捉え方を変えたり、状況や環境を変えて対象と向き合ったりして、段階的に行うことで改善が見込まれていますよ」

向き合いたくもないかもしれませんが、闇雲に怖がっていないで、どうなっているボタンに恐怖を感じるのか、冷静に判断することが必要なのですね。
何もボタンに限った話ではなかった限局性恐怖症。一見何でもないものごとに恐怖や嫌悪を抱いてしまうということで、突然、自分が発症してしまうこともありますし、身近な人がなることもあり得ます。頭ごなしに「あり得ない!」と言うのではなく、自分の気持ちや相手に寄り添ってみると解決の糸口が見つかるかもしれませんよ。


(田中いつき+ノオト)

関連記事