テレビの失敗シーンが苦手… 「共感性羞恥」陥りやすいのはどんな人?

テレビの失敗シーンが苦手… 「共感性羞恥」陥りやすいのはどんな人?

マツコ・デラックスさんも共感…!
あなたは「共感性羞恥」という言葉を知っていますか? 8月24日に放送された「マツコ&有吉の怒り新党」(テレビ朝日系列)で取りあげられて、いま話題になっています。

共感性羞恥とは、他人の失敗を自分事のように感じてしまう心理状態のこと。家族や友人などの失敗はもちろん、ドラマで登場人物が恥をかくシーンや、バラエティ番組で芸人がスベる場面になると、見るのが辛くなってしまう感覚を指します。

番組では10〜80代の男女500人にアンケートをとり、10.4%が共感性羞恥の経験があると紹介。マツコ・デラックスさんも「わかる!」と首を縦に振っていました。今回は、そんな共感性羞恥について、ゆうメンタルクリニック総院長・ゆうきゆう先生に詳しいお話をうかがってきました。

■共感性羞恥って病気なの?

──番組放送後、多くの視聴者から「私も共感性羞恥の経験者だ」と反響がありました。そもそも共感性羞恥は心の病なのでしょうか?

「海外の研究チームからは論文が上がっていますが、日本ではあまり耳にしないというか、今のところ共感性羞恥に関してクリニックへ相談に来られた方はいません。

基本的に、現時点では羞恥心に特定した共感性を疾患として扱っていません。一応、医学的に認められている心理として説明はできますが、特定の病気として認められているとは言い切れませんね」

──共感性羞恥が起きる原因は何なのでしょうか?

「自分自身が恐怖心を抱いているような失敗や恥ずかしいことだと認識している出来事を目にすることで、いくらそれが他人の失敗でもひどく共感してしまい『自分が失敗したかのような恥ずかしさを覚える』のだろうと考えられます。

自ら共感性羞恥だと感じている人でも、その対象はさまざまなはずです。 『何について恥ずかしいと思っているか』と言うこともありますし、『どんな失敗を一番恐れているか』ということでもあります」

──確かに。たとえば大舞台で失敗をしてしまうドラマシーンに共感する人は、過去にそういうトラウマがあったのかもしれないですね。

「もちろん羞恥心や失敗を恐れる気持ちは、多かれ少なかれ誰にでもあるものですが、特にこの失敗を恐れる気持ち・羞恥心を感じたくないと思う気持ちが過敏になると、少し被害妄想気味になることがあるんですよ。起きたことが自分に向けられているように感じられたり、自分への警告かも……などと関連性を持たせて捉えてしまったり。 特定の失敗や恐れている状況に過敏になるあまり、まるで自分のことのように恥ずかしくなるのでしょう」

■共感性羞恥に陥りやすいタイプって?

──原因は、その人自身の物事の捉え方にあったんですね。そんな状態に陥りやすい人の傾向はあるんでしょうか?

「共感性が強い、同情心が強い人でしょうね。同時に羞恥心が強く、恥をかくことを恐れているタイプの人だと思います。

共感性が強い人は、もともと感受性が鋭い/繊細な傾向にあります。そのため、いろいろなことに傷つきやすかったり、自分の感じるショックについて恐怖心を抱きやすかったりします。人は恐怖心を刺激されることをなるべく避けたいと感じるので、それに関係することについて、過敏になることも少なくありません。そのため特定の出来事に対して『関係念慮(=自分と関連付ける)』が起きやすくなります。

人目を気にしやすいという意味では、思春期の子どもや女性、うつ傾向の方も関係念慮が起こりやすく、陥りやすい傾向があると言えるでしょう」

──番組内では、「10人に1人が共感性羞恥」と紹介されていましたが、筆者の周囲に話を聞くと経験者がほとんどで、実際はデータより多いのではと感じました。

「周りの人との雑談で『わかる』と答える人は、案外多いのではないかと思います。今回、テレビ番組によって話題になったのは、今までなんとなく感じていた気持ちを『あ、これそういう名前なんだ』、『誰にでもあることじゃないんだ』、『自分だけじゃなかった!』という発見が反響を得られたのが大きな要因だったのではないかな、と。実際にこの症状でものすごく悩んでいる人はそれほど多くないと思いますが、今回の話題はそういった人にとって、自分のことがわかってもらえたようでとてもうれしかったのではないかな、とも思いました」

■共感性羞恥を治すためには?

──共感性羞恥を軽減したり、治したりすることはできるんでしょうか?

「本来、自分には関係ないことなので気にしないのが一番なのですが、どうしても気になってしまう場合は積極的に別のことに意識を移していくのがベストではないでしょうか。共感性羞恥が起きている時、それについて考えすぎると思考はループしますし、意識がそこにフォーカスされているので悩むという状態から抜けられません。 そこから脱するには別の思考にシフトすることが大事です。

『まぁそれはそれとして、今日の晩御飯なんにしようかな』、『この女優さんが着ている服、どこで売ってるのかな』など、何でも構いません。自分の状態に流されてしまわず、別の方向に意識を向けることで症状が起きても短時間で切り替えられますし、自分が捉われやすい出来事からも気をそらすことができるようになりますよ」

■他人の失敗は自分の失敗ではない!

──最後に、共感性羞恥状態になってしまう人に、アドバイスをお願いいたします。

「自分と結びつけて考えてしまっているけれど、本当は自分とは関係ないことだということを再度確認するようにしてみましょう。 他人の失敗は自分の失敗ではないので、自分と混同して負担を増やす必要はありません。

また、共感する出来事が多いと、その失敗自体に慣れてしまうこともあります。回数を重ねると人間は出来事自体に慣れてしまうというのが自然なこと。『前は恥ずかしかったけど、今見ると別に……』というのもあると思いますよ」

どうしても慣れない・日常生活で頻繁に起きて辛すぎる……という状態でなければ、それほど心配する必要はないと話してくれたゆうき先生。他人に共感できる感受性があることは決して悪いことではありません。共感性羞恥に陥ってしまう人は、自分自身が辛くならないように、気持ちを上手にコントロールしましょう。

(阿部綾奈/ノオト)

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