産婦人科医に聞いた! いま知っておきたい「中絶」のリスク

産婦人科医に聞いた! いま知っておきたい「中絶」のリスク

関係ないと思ってない?
妊娠・出産というと、おめでたいことのイメージが強いですが、一方で避妊の失敗や、不適切な相手との妊娠により、中絶という選択肢を選ぶ人もいます。

「中絶をすると妊娠しにくくなる」「手術がものすごく痛い」というようなイメージもありますが、本当のところは一体どうなのでしょうか? 産婦人科の医師に実際に伺ってきました。
今回インタビューを受けてくれたのは、池袋クリニック院長の村上雄太先生。


──妊娠中絶を行うにあたって、期日や用意すべき書類など、何か条件はあるのでしょうか?

「相手の同意があることが原則ですが、さまざまなケースがあるので、本人の同意のみでも手術は可能な場合もあります。また期間は法律上、21週6日まで中絶することができます。ただ、11週6日までは当院のようなクリニックで日帰りの手術を受けることも可能なのですが、12週からは中期中絶という形に変わり、分娩施設がある病院でないと手術は受けられず、数日の入院も必要です。また戸籍には残りませんが、胎児の死亡届や埋葬届けなどを役所に提出する必要もあります。

12週以降の方が受ける手術自体は、子宮の入口を広げたあと、陣痛誘発剤を使用して強制的に陣痛を起こしますが、分娩と同様の手順のため麻酔は使えず、陣痛の痛みがあります。費用も出産と同程度かかってきますね」

──12週未満とそれ以降で、かなり大きく変わってくるんですね。では初期の中絶手術とはどのような手術を行うんでしょうか?

「妊娠初期であれば掻爬(そうは)法か、吸引法という方法の2つがあります。掻爬法は、器具を使って胎盤や胎児を全て掻きだす方法。吸引法は掻爬法と同じく掻きだすのですが、ある程度のところからは吸引器を使い圧力で残りを吸い出します。吸引法の方が短時間ですし、出血量も抑えられることから、WHOや産婦人科学会でもこちらの方法が推奨されています」
──手術当日は、どういった流れで行われるのでしょうか。

「実は病院によっても違っていて、12週未満の場合、当日来院してから数時間で退院できるところもあれば、前日からの入院が絶対必要、という病院もあります。これは、子宮の入口を広げる処置をするかどうかの違いなのですが、当院では行っていません。というのも、この処置をすると手術自体はしやすくなるのですが、出産経験がない人にとっては痛みが強く、この処置自体にトラウマを抱く方もいるほどなんですよ。ただ、中期中絶の場合、この処置は必ず行われます」

──全く知りませんでした。処置するかしないかで、手術のリスクは変わるんでしょうか?

「手術中の手間はもちろん増えますが、リスクが増えるといったことは特にありませんね」

──それは安心しました。では、実際に手術自体はどのように進んでいくのでしょうか。
「まず中絶手術は短時間で終わる手術なので、静脈麻酔という呼吸は止めずに意識だけがなくなるという麻酔をかけます。そこから手術ですが、時間はだいたい15分くらいで終わってしまいますね。そのあと麻酔から覚めるのに2時間くらいなので、最初の問診から準備までを含めても、当院では滞在時間は3~4時間程度となります」

──とても短時間ですね。ところで、中絶となるとその後妊娠しづらくなるというような話を聞きますが、実際はどうなんでしょうか?

「昔は”中絶はいけないこと”として、そのような刷り込みが行われていました。もちろん手術なので、子宮内膜を削りすぎたり、子宮に穴を空けたりなど、トラブルが全くないとは断言できませんが、確率は低いリスクです。それに、出産すること自体も子宮や母体に大きな負担はかかります。でもみなさん、1人目を産んだからといって、2人目が産めないかも、不妊になるかも、とは思いませんよね」

──言われてみれば、確かにそうですね。

「実際に妊娠期間中や出産に伴って、死亡する方も少なくはありません。それと比べても、中絶が特別リスクが高いというわけではないんです。もちろん、中絶が簡単にできるとオススメするわけではありませんが、ちゃんとした医療機関で早く処置を受ければ、特別心配しなくても大丈夫だということはお伝えしたいですね」
──最後に、中絶の前に、望まない妊娠をしないためにできることを教えて下さい。

「何よりも女性が自分の体を守るという意識を持つことです。避妊のことは男性に任せる、という意識が根強いですが、妊娠・出産は女性がするもの。だからこそ避妊も女性がするという意識を持っていただきたいですね。コンドームは性病予防にはなりますが、避妊確率は100%にはなりませんし、男性が主体というのも望ましくありません。ピルの使用を含めた人工的なコントロール以外は信用せず、女性側が自分の体を守る方法をきちんと持つことが大切です」


「初期中絶でも、中期中絶でも、不妊や死亡のリスクは特段高くない」ということでしたが、やはり出産と同じ形式で行われる中期中絶になってしまうと、身体的な痛みや、死産扱いになるということで精神的にもきつく、入院などによる負担も大きい、ということを改めて知ることができました。

妊娠、そして中絶は女性の身に起きること。望まない妊娠に苦しむことのないよう、女性自身が自分の体に責任を持ち、避妊にも主体となって取り組んでいく姿勢が大切なのですね。

(きたざわあいこ+ノオト)

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