春、「出会い」と「別れ」を描いたマンガ3選

春、「出会い」と「別れ」を描いたマンガ3選

泣いてもいいよ。春だもの
「春」といえば、出会いと別れの季節。なんでも打ち明けられる友人と離れ離れになってしまうこともあるでしょう。ピカピカの新人が入ってきて、あなたが指導する立場になることもあるかもしれません。それをちょっと憂鬱だと思う人も、逆にワクワクする人も、さまざまな出会いと別れを通じて、自分がひとつオトナになる季節、それが「春」。今回はそんな「自分を見つめ直す」きっかけになるような、「出会い」と「別れ」を描いたマンガ3選を紹介します。

■『かくかくしかじか』(東村アキコ/集英社)5巻(完結)

第19回文化庁メディア芸術祭での受賞も記憶に新しい本作。著者の青春時代を「日高先生」との思い出を軸に描いた自叙伝です。ボーッとした女子高生アキコは少女漫画家になる夢を叶えるために美大受験を決意。友人に誘われて通うことになった絵画教室で竹刀を振り回す強面教師、日高先生と出会います。自分は絵がうまいとうぬぼれていたアキコは初日から日高先生にめちゃくちゃにけなされます。厳しい先生に時に嫌気がさしながらも、必死に絵を描き、美大受験に臨みます。作中では何度も日高先生を思い出す現在のアキコの姿が差し込まれ、「別れ」の気配が漂い、胸を締め付けます。読み進めるほどに、自分に厳しくしてくれる人、必死にひとつのことを伝え続けてくれる人への感謝の気持ちが思わず込み上げてくるような作品です。

■『犬を飼う』(谷口ジロー/小学館)1巻(完結)

こちらも著者の実体験を描いた作品。愛犬タムタムが死ぬまでの1年間を描いています。タムタムが老衰でどんどん弱っていく様子は、マンガであっても目を背けたくなるほど。歩けなくなっても、食事を摂れずに点滴を打つ毎日となっても、その点滴すら体が受け付けなくなったとしても、生きようとするタムタム。「なぜ、こんなになってまで生きようとするんだ?」と飼い主夫婦がタムタムに問いかけるシーンは何度読んでも涙が浮かんでしまいます。本作のタイトルは『犬を飼う』。それがどういうことなのか? 動物と暮らすことがどういうことなのか? を動物を飼ったことのない読者にも示してくれるような本作。タムタムの必死に生きる姿を通じて、自分自身の生き方についても考えさせられる作品です。

■『オンノジ』(施川ユウキ/秋田書店)全1巻(完結)

物語はストーリー仕立ての4コマ漫画。主人公の少女ミヤコはある日突然自分以外の誰もがいなくなった世界に取り残されます。(やがて、過去の記憶もなくしていることにも気付きます)。誰もいないデパートでマネキンに落書きをしてみたり、線路に寝そべってみたりと誰もいないからこそできることで遊ぶけれど、いつもひとりぼっち。そんなミヤコの前に突如しゃべるフラミンゴが現れます。ミヤコがオンノジと命名したそのフラミンゴは元中学生男子。彼もまたある日突然フラミンゴになり、ひとりぼっちの世界を生きていたのでした。そんな謎に謎を重ねた世界で出会った二人の少し寂しくて、おかしくて、温かい日々を描いた本作。二人の出会う前とその後を描くことで、「二人でしかできないこと」「二人だからできること」が際立ちます。正解も失敗もなく、明日があるのかもわからないような世界で二人でいること。終盤、未来に踏み出していく彼らの姿がいつまでも胸に留まるような作品です。

出会いも別れも意味がある。それはずっと先の未来に、振り返ってみて初めてわかることかもしれません。素敵な「春」になるといいですね。

(岩崎由美/マンガナイト+ノオト)

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